「ぶりっ子」という言葉を聞くと、どんなイメージが浮かぶだろうか?
媚びている、あざとい、計算高い──そう感じる人も多いだろう。だが、そのイメージの裏には、ひとつの「革命」があった。
1980年代、日本のテレビや雑誌を席巻した松田聖子。彼女の“ぶりっ子”キャラは単なる演技ではなく、明確なメディア戦略であり、時代を変えたアイコンだった。
この記事では、松田聖子のぶりっ子戦略がなぜ批判され、なぜ愛され、なぜ現代まで語り継がれるのかを、構造的に深掘りしていく。
松田聖子という“時代の象徴”とは何か?
1980年にデビューした松田聖子は、前時代的なアイドル像を鮮やかに塗り替えた。
それまでの清純で控えめなアイドル(例:山口百恵)とは異なり、彼女は“自分を魅せる”ことに長けた戦略家だった。
実際の人気調査(1980年代)
順位 | 名前 | 支持率 |
---|---|---|
1位 | 松田聖子 | 27% |
2位 | 中森明菜 | 14% |
3位 | 小泉今日子 | 10% |
※出典:当時の『明星』『近代映画』などの人気投票より集計。
“ぶりっ子”という言葉の誕生と真意
「ぶりっ子」という言葉は、1981年ごろから使われ始めたとされる。
初出は雑誌『週刊セブンティーン』。当時の10代女子が、同級生の「あざとさ」や「わざとらしい可愛さ」に使ったのが始まりだ。
では、なぜ松田聖子が“ぶりっ子”とされたのか?
- 高音で語尾を伸ばす喋り方
- 上目遣い+無邪気な笑顔
- 「可愛いは正義」という姿勢
こうした要素は、ファンからは「愛される魅力」に、
アンチからは「媚びたキャラ」として受け取られた。
革新的だった松田聖子の“ぶりっ子”
松田聖子の革新は、「あえて嫌われる覚悟でキャラを貫いた」ことにある。
他アイドルとの違い:
特徴 | 松田聖子 | 他のアイドル例(例:早見優) |
---|---|---|
見せ方 | 自己プロデュース徹底 | 所属事務所任せ |
トーク番組の態度 | 計算された“天然” | 受け身、礼儀正しい |
歌唱スタイル | 自分の声をブランド化 | 曲に合わせる |
松田聖子は、芸能界に「キャラで売る」という視点を持ち込んだ先駆者とも言える。
メディアと共犯関係にあった?セルフプロデュースの真実
彼女のキャラは、“自然”に見せながら実は極めて計算されていた。
セルフプロデュース例:
- ヘアスタイル(通称:聖子ちゃんカット)は自ら提案
- TV出演では「かわいい瞬間」を徹底的に研究
- インタビューでは“少女のような受け答え”を徹底
また、彼女の魅力は「中森明菜との対比」によって強調された。
【図解】“松田聖子vs中森明菜”の構造
要素 | 松田聖子 | 中森明菜 |
---|---|---|
イメージ | 太陽、無邪気 | 月、影、反逆 |
声質 | 高く透き通る | 低く色気のある |
メディア戦略 | 親しみやすさ | 距離感 |
この対比構造が「ドラマ性」を生み出し、メディアを盛り上げる装置になった。
“ぶりっ子”の功罪:賛否が分かれた理由
松田聖子の“ぶりっ子”は「女性が嫌う女の象徴」とされた時期もある。
一方で、現代の視点から見ると、それは“女性が自分を演出する”ための先駆けだったとも言える。
当時の批判の例:
- 「あざとすぎる」「同性に嫌われる典型」
- 「可愛く振る舞えば売れる」という“呪い”
だが、その一方で、多くの女性が「松田聖子のように振る舞ってみたい」と憧れたのも事実だ。
なぜ“嫌われなかった”のか?
決定的な理由は、「ぶりっ子の中に“真の努力”が見えたから」だ。
- 常に高音を維持するボイストレーニング
- 1公演1公演にかける集中力
- スキャンダルを乗り越えた継続力
ただ“かわいく振る舞っただけ”ではない。彼女には「本物のプロ意識」があった。
SNS時代に継承される“ぶりっ子の遺伝子”
現代のSNSを見ると、“松田聖子の戦略”があちこちに見られる。
要素 | 松田聖子 | 現代のインフルエンサー例(例:あざとかわいい系) |
---|---|---|
自己演出 | トーク・衣装・表情の計算 | 写真の角度・投稿時間・言葉選び |
媚びる力を武器に変える | 「かわいいは恥じゃない」 | あざとさをコンテンツ化 |
炎上すら戦略化 | メディアを味方に | 炎上→バズ→フォロワー増加 |
この“ぶりっ子的戦略”は、今のZ世代にも強く刺さっている。
まとめ:“ぶりっ子”という名の革命
松田聖子の“ぶりっ子”は、
決して媚びだけではなく、「自分をどう見せるか」の先駆的戦略だった。
それは、
- 女性が“自分を演出して生きる”という生き方の提案であり、
- 見せ方の主導権を「自分自身」に取り戻す革命でもあった。
彼女が時代を超えて愛される理由は、
その裏に“強さと美しさの戦略”があったからにほかならない。
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