はじめに
「私、また感情で爆発してる……」
ほんの些細なことでイライラしたり、言葉にならないモヤモヤを抱えたり、急に涙が出たり。そんな日々が続いていた。
私自身も、自分の感情がよくわからなかった。「なぜこんなに怒っているのか」「なぜあの言葉に引っかかるのか」「なぜ涙が止まらないのか」。
何も説明できない。けれど、心の中は荒れていた。誰にも理解されないと感じて、距離を取った。そして、人間関係はギクシャクしていった。
でもある日、私は「感情を言葉にする」というシンプルな方法で、少しずつ救われていく。
これは、感情が爆発しやすかった私が、“言語化”によって自分を取り戻していった実体験の記録である。
感情が爆発していた頃の私
些細なことで怒り、泣き、落ち込む日々
学生時代から、人より少し感情が激しいとは感じていた。でもそれをどう扱えばいいのかわからなかった。
ある日、職場で上司に言われた一言に傷つき、その夜ずっと泣いていた。しかも、なぜ泣いているのか、自分でもわからなかったのだ。
家族や友人に相談しても「気にしすぎだよ」「そんなに怒らなくてもいいじゃん」と返され、ますます孤独になっていった。
「なんで誰もわかってくれないの?」という孤独
「私は間違ってるの?」「私の感じ方って変なの?」そう思うようになった。感情はあるのに、誰にも理解されない。伝える言葉もない。
言いたいのに、言えない。言ったとしても、伝わらない。そんな無力感が積もって、ついには人との会話自体が怖くなった。
感情に振り回される生活の弊害
感情をコントロールできないことで、日常生活に支障が出るようになった。仕事では冷静さを欠き、友人関係も不安定。
些細なことで過剰に反応してしまう自分が嫌いだった。でも、それを変える術がなかった。
変化のきっかけは「ノートに書くこと」だった
きっかけは1冊の書籍との出会い
ある日、書店でふと手に取った本に「感情は、言葉にすることで整理できる」と書かれていた。その一言が心に刺さった。
それまで私は、自分の感情に“名前”をつけたことがなかった。ただ「イライラする」「なんかムカつく」「意味わからない」と曖昧なままにしていた。
「言語化」の練習としての感情日記
試しにその夜からノートを開き、今日の出来事とその時の感情を一言ずつ書き出してみた。
例:
- 「上司に注意された→怒り」
- 「友達の言葉がひっかかった→寂しさ」
- 「一人の夜に不安になった→孤独」
書き出すうちに、「怒り」の中に「傷つき」「無力感」「不安」が混ざっていることに気づいた。
書くことで気づいた「感情の正体」
ノートに書くことで、初めて自分の感情を“客観的に”見られるようになった。今まで混乱していた気持ちが、整い始めたのだ。
そして、怒りの裏には「わかってほしかった」「期待していた」という、もっと根深い気持ちがあることを知った。
“感情に名前をつける”ことで起きた内面の変化
モヤモヤの中にあった「不安」「寂しさ」「期待」
言語化を続けていくと、毎日感じていた“漠然とした不快感”の中に、いくつもの細かい感情が混在していたことに気づくようになる。
「ムカつく」の中に、「寂しさ」「悲しさ」「期待が裏切られた感情」があった。
感情に名前をつけると、自分を客観視できるようになる
言葉にすることで、「いま私は◯◯という気持ちなんだな」と冷静に見られるようになった。結果、感情に支配されることが減っていった。
まるで感情が「暴走する車」から「ハンドルのついた車」になったような感覚だった。
怒りの裏にある本当の気持ちに気づけた瞬間
「また怒ってしまった……」と思った出来事を、ノートに書いて振り返ると、怒りの根底に「認められたい」「大切にされたい」という思いがあった。
それに気づいたとき、涙が溢れた。自分が本当に求めていたものがやっとわかった気がした。
人間関係が変わった理由:伝える言葉が増えたから
「わかってほしい」の前に「伝える」が必要だった
それまで私は、「どうして察してくれないの?」と相手に苛立っていた。でも、自分でも言語化できていない感情を、他人が理解できるわけがない。
「私、いまこういう気持ちなんだ」と言葉にすることで、相手との間に“共通の言語”が生まれた。
言語化で対話の質が変わった実体験
例えば、恋人との喧嘩で「なんで怒ってるの?」と聞かれたとき、「なんとなくムカつく」ではなく「期待してたことが伝わっていなかったことに寂しさを感じた」と言えたことで、話し合いの質が変わった。
相手も「そうだったんだ」と理解してくれるようになった。
感情を共有することで生まれる“共感”という癒し
感情を言葉にして伝えると、相手もまた自分の感情を出してくれるようになる。それが、共感となり、関係の温度をあげてくれる。
理解される経験は、心をとてもあたたかくする。そしてそれが、人と繋がっていく安心感を生んでくれた。
読者へのメッセージ:「感情の言語化」は誰でもできる
初心者でも始めやすい「感情日記」の書き方
- 形式は自由。スマホでもノートでもOK
- 今日の出来事 → 感じたこと → なぜそう感じたか?を1行ずつ
- 「怒り・悲しみ・不安・喜び」などの基本感情から書き始めよう
感情の語彙力を高める3つのトレーニング法
- 感情語リストを眺めて、しっくりくる言葉を選ぶ練習
- ドラマや映画を観て、登場人物の感情を言語化してみる
- 日常の中で「いま私はどう感じてる?」と自分に問いかける
自分の感情とやさしく向き合うために
感情に“正しさ”や“善悪”はない。ただ「そう感じた」という事実があるだけ。
だからこそ、言葉にすることで感情は癒される。名前をつけてもらった感情は、静かに落ち着いてくれる。
まとめ:言葉は、感情の居場所をつくってくれる
「感情の言語化」とは、自分を理解するための第一歩。
名前を与えられた感情は、迷子でいることをやめ、安心して心の中に座ってくれる。
もしあなたも、感情に振り回されて苦しんでいるなら、今日からそっとノートを開いてみてほしい。
あなたの中にある、言葉にならなかった思いが、きっと少しずつ静かにほどけていくはずだ。
感情に“言葉”という光をあてること。 それが、私たち自身をやさしく救う第一歩になるのだから。
コメント