なぜ“あの列”はいつも遅いのか?
「こっちの列のほうが早そうだ」
「……やっぱり隣のほうが早かった!」
「もう、なんでいつもこうなるの!?」
あなたも一度は、スーパーやコンビニのレジ待ちでイライラした経験があるのではないでしょうか。
でも実はその感情の裏には、
**私たちが無意識に行っている“思考のクセ”や“意思決定のバイアス”**が隠れています。
本記事では、スーパーのレジという日常のワンシーンを通して、
“行動経済学”の視点から私たちの思考の盲点を見つめ直してみましょう。
行動経済学とは?ざっくり解説
行動経済学とは、経済学と心理学が融合した学問分野で、
**「人は“合理的”に意思決定しているわけではない」**という前提から、
現実の行動パターンを読み解こうとする学問です。
特に有名なのは、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの研究。
- 人は損失を過剰に嫌う(損失回避バイアス)
- 時間がかかると「不公平だ」と感じる(公平性バイアス)
- 直感で判断する“ヒューリスティクス”に頼りがち
──こうした“非合理な思考”は、日常生活の中にもたくさん潜んでいます。
シーン1:レジ列で“損した気分”になる理由
【よくある現象】
- 自分の並んだ列が一番遅い
- 他の列がどんどん進んでいく
- 並び替えた途端、元の列のほうが早くなる
このとき、私たちが無意識に感じるのは…
「自分だけが“損”をしている気がする」
これはまさに、「損失回避バイアス」。
同じように並んでいるのに、“他人より劣っている”と感じるだけで、不満が爆発するのです。
シーン2:短い列を選んだ“はず”なのに、なぜミスる?
【直感バイアスの罠】
- 商品の数が少ない客の後ろに並んだ
- でもその客がクーポンやポイント、現金払いで時間がかかる
- 自分の計算が外れてイライラ…
これも、“ヒューリスティクス(簡略化思考)”による判断ミスです。
少ない商品 = 早く終わる
→ という直感が、必ずしも正しくない
人は細かく考えるより、「パッと見」で判断したがる生き物。
その結果、“見た目の情報”に騙されるのです。
シーン3:「並び直すかどうか」迷う心理の正体
- 隣の列の方が早い!でも今さら移動するのはリスク…
- 並び替えた直後、またそっちが遅くなる可能性も…
この心理の裏には、**“選択の後悔”=「後悔回避バイアス」**があります。
「動いて後悔するより、動かず後悔した方がマシ」
という思考が働くことで、合理的な判断ができなくなるんですね。
じゃあどうすれば?“行動経済学的”イライラ回避法
◆ 視点1:「全体最適」で考える
- 「自分が早く抜けたい」よりも「全体がスムーズに回る」方が社会的には正解
- 並び替えは混乱のもと。他人の動きに惑わされない思考が必要
◆ 視点2:「列選びはゲーム」と捉える
- 正解はない。だからこそ**「仮説検証」のつもりで楽しむ**
- 思考実験として使えば、むしろ自分の観察力が鍛えられる
◆ 視点3:「自分の感情」を観察してみる
- なぜ今、イラっとしてる?
- 「他人と比べて損したくない」という感情が湧いているだけかも?
感情を「対象化」できるようになると、自然と思考に冷静さが戻ります。
日常の中に、思考の“筋トレ場”はある
- 信号待ち
- 混雑した電車
- SNSの炎上投稿
- 誰かの“感じ悪い態度”
こうした日常のストレスや違和感も、
思考の練習台に変えることができます。
「なぜ自分は、そう思ったのか?」
「違う見方をするなら、どうなるか?」
「誰かを責める前に、思考を深められないか?」
こうした小さな問いが、“自分の頭で考える力”の土台になっていきます。
まとめ|レジ待ちは、思考のトレーニングになる
一見するとただのイライラ体験も、
視点を変えれば**「自分の思考クセを見つけるチャンス」**になります。
- 人は直感に騙される
- 他人と比べてイライラする
- 損したくない気持ちに支配される
- 判断ミスを後悔して自己嫌悪になる
すべては「人間らしさ」であり、そこに気づくことが**“考える力”を高める第一歩**です。
「レジ待ちは、あなたの思考癖を映し出す鏡」
今日も誰かが、隣の列を羨ましそうに見ている──。
さあ、あなたなら、どう考える?
コメント