はじめに
「どうして私はこんなに苦しいの?」
毎日のように心がざわつき、ちょっとしたことで涙が出る。誰かに否定されると怒りが込み上げ、人の優しさにすら過剰に反応してしまう。
そんな自分を責め、さらに落ち込む——。
心が暴れていた。誰かに助けてほしかった。カウンセリングにも行った。薬も飲んだ。
でも、どうしても救われた実感がなかった。
そんな私を変えたのは、ある夜、ふとノートに書いた一言。
「つらい」
たったそれだけだった。けれど、そこから私の“回復”は始まった。
これは、感情の波に呑まれ続けていた私が、「ことば」という小さな力に救われていった物語である。
カウンセリングも薬も、私には響かなかった
期待していた「救い」がこなかった理由
初めてカウンセリングを受けたとき、私は心から「これで楽になれる」と思っていた。でも、現実は違った。
カウンセラーに状況を話しても、感情を話すことができなかった。自分でも自分の感情がわからなかったのだ。
薬も試した。気持ちが一時的に落ち着いたようにはなったけれど、「本当の原因」は霧の中に残ったままだった。
「誰かに委ねるケア」では回復できなかった私
私は「誰かが私を助けてくれるはず」と思っていた。でも、外側からのアプローチは、根本的な「自分の内側」に届かなかった。
それはまるで、流れる川の上に葉っぱだけ浮かべて、源流を見ないようにしていたような感覚だった。
ますます深まった孤独と無力感
相談しても、薬を飲んでも変わらない。そんな日々が続くと、「もう一生このままかもしれない」とさえ思った。
自分の心が、遠く離れた場所で勝手に暴れているように感じた。私はその“主導権”を、完全に失っていた。
ノートに書いた“ひとこと”が、すべてを変えた
始まりはたった一文:「つらい」
ある日、夜中に目が覚めて、突然涙が止まらなくなった。理由もわからず、ただ泣いていた。
その時、机の上にあったノートに、なにかを書きたくなった。
「つらい」
それだけ書いて、寝た。
でも、翌朝ノートを見たとき、ほんの少しだけ心が落ち着いていた。
書くことで気づいた、感情の“正体”
その日から、毎晩少しずつノートに感情を書き始めた。
- 「上司に言われた言葉が頭から離れない → 悲しい」
- 「友人の態度が冷たく感じた → 寂しい」
- 「また感情的になってしまった → 自己嫌悪」
書いているうちに、「怒り」の裏に「悲しみ」や「不安」があることに気づいた。
感情を一段深く掘り下げていくと、本当の自分の声が聞こえるようになった。
「気づき」が怒りをやさしさに変えていった
書くことで「本当はわかってほしかった」「もっと寄り添ってほしかった」という気持ちが見えてきた。
そうか、私はただ「誰かにそばにいてほしかった」だけなんだ。
そう気づいた瞬間、不思議と怒りがやさしさに変わった。自分へのやさしさ、そして相手へのやさしさ。
言葉にすることは、感情に“居場所”を与えることだった
感情をそのままにしていた頃との違い
以前は、感情に気づいても「こんなことで落ち込むなんてダメだ」と否定していた。
でもノートに書くようになってから、「どんな感情にも理由がある」と思えるようになった。
すると、暴走していた感情が少しずつ落ち着き、受け入れられるようになっていった。
「私は今こう感じている」と言える安心感
言葉にすると、自分の気持ちが“見える化”される。
「いま私は悲しい」「私は今、不安でいっぱいだ」と言えるだけで、自分の中に“落ち着ける場所”ができる。
それは誰かにわかってもらえなくても、自分が自分をわかってあげる、そんな感覚だった。
感情に名前をつける=理解への入り口
感情に名前があるだけで、人は安心する。「モヤモヤ」ではなく、「寂しさ」や「期待外れ」と言えるだけで、気持ちが整理されていく。
名前をつけられた感情は、居場所を得て、静かに落ち着いていく。
自分を守る「ことば」を持つということ
自己対話の習慣が心を整えた
今では、1日1ページの“感情ノート”が習慣になっている。
今日の感情、背景、その感情に対して自分がどう対応したかを言葉にするだけ。
「書く」ことで、自分と対話する時間が生まれ、それが“心のメンテナンス”になっている。
外に頼らず、自分の中に“よりどころ”をつくる
もちろん、カウンセリングや薬が悪いわけではない。でも、私にとって本当に効いたのは「自分の中に答えがある」と信じることだった。
「ことば」を持つことは、自分を守る力になる。
私を変えた3つの言葉
- 「私は怒っていい」
- 「いまは不安だけど、ちゃんと感じていい」
- 「大丈夫、私はここにいる」
この3つの言葉が、どれだけ私を救ってくれたか、今でも思い出すと涙が出そうになる。
まとめ:自分を助ける“最初の支え”は、外ではなく内側にある
人は、誰かに助けてもらう前に、自分の中の声を聞く必要がある。
心の暴走を止めるには、感情に目をそらさず、言葉を与えることが第一歩。
カウンセリングでも薬でもなく、「ことば」。
それが、私の心を救った、いちばんやさしくて、静かな力だった。
あなたの中にも、きっと“ことばの力”がある。
どうかそれを、信じてみてほしい。
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